1986年のオフィス

私が入社した頃のオフィスで今と一番違うのは、なんといっても机にパソコンがないことだ。この話を息子や若い知り合いにすると、パソコンなくてどうやって仕事するの?と驚かれる。確かに今思うとその通りだが、もちろんパソコンがなくてもちゃんと仕事をしていた。まず会社にノートとレポート用紙が常備してあった。あと方眼紙も技術系の必需品だ。

始業時間が来たら、朝礼である。いろいろ連絡事項が口頭で伝えられる。私は新人だから、部下はいないが、もし課長なら、部会とかで聞いた連絡事項を課の人たちに伝える。口頭での伝言ゲームである。あと、それとは別に回覧という非常に重要な伝達手段がある。いろいろ重要な書類が束になって課員に回覧される。回覧にはチェック表がついていて、読んだら自分の名前のところにチェックをする。必要なものはコピーして自分のファイルに入れる。まあ回覧は今でもあるだろうが、当時は非常に重要な伝達手段だった。

さて業務開始である。今日の実験に必要なものをもらいに他部門の人に電話して、あとで届けてもらうことにする。環境試験室の予約を予約ノートがおいてあるところに行って、空いている時間に名前を記入する。購入するものがでてきたので、購入依頼書をオフィスのキャビネットから取ってきて、記入して上司にハンコをもらい、FAXで発注する。念のため、業者に電話しておく。とにかく、いろんな用紙がキャビネットにあって、必要に応じてそれに記入して提出する。

準備ができたら、実験室に行く。ノートにデータを記入していく。あるいは、方眼紙にデータをプロットする。電話がかかってきたら、それに出る。電話は壁に固定されている。受話器と電話機はコードでつながっているから、その場から移動はできない。電話機はもちろん部屋に一台とかだから、電話が鳴ったら近くの人が出て、取り次ぐ。

実験が一段落したら、居室に戻ってレポート作成だ。レポート用紙に実験の内容を記載し、プロットした方眼紙を切り抜き、のりで貼る。打ち合わせのときは、このレポートを人数分コピーして配る。さて、そろそろ業務終了だ。飲みに誘うために同期に机に向かう。電話でもいいのだが、上司がでると面倒だから、直接向かう。

という感じで、パソコンがなくても仕事はできたわけです。