ざっと複写機の仕組みについて書いてきた。私は1986年に複写機開発の仕事に配属され、製品開発に携わった。このころは、既に複写機はオフィスなどに普及していて、更にカラー複写機や小型コピー機などの新しい複写機が世に出始めていた。TVコマーシャルでこれらの製品のCMが華やかに流れていて、まあ複写機全盛期と言ってもいい時代だった。
私は10年ちょっと複写機の技術開発を行ってきたが、とにかく実感していたのは、なんとも動作が不安定なことである。トナーの帯電が静電気によるものだったり、いろんな紙が存在したり、あるいは気温や湿度によって紙やトナーの特性が大きく変化したりすることが主因である。よくもまあ製品化できているなあ、というのが実感である。しかし、これはこの技術の誕生から50年も経て複写機が普及しているときの感想なのである。いったい発明当初はどんなことになっていたのか。
ということで、電子写真技術の誕生について、書いていく。内容は、すべて「ゼロックスとともに」 (ジョン・H・デサウアー 田中融二訳)からの引用である。