私が最初に担当したのは、複写機の中の最後の工程、定着プロセスだった。紙にトナーが乗った状態で定着器に搬送され、そして熱で紙に定着させる工程だ。様々なやっかいなプロセスを経てたどり着いた最後の工程。熱せられた2本のローラに紙を通すだけである。しかしトナーはなかなか言うことを聞かない。紙にちゃんと定着しないことがある。ちょっと擦るとはがれてしまう。あるいは紙に定着せずにローラに付着することもある。そしてローラについたトナーが次の回転で紙につく。そうすると、ローラ周期の模様が紙についたりする。なので、定着ローラはトナーが付きにくい材質にする必要がある。しかも熱には強くなくてはならない。このように定着ローラの材質の検討が永遠に続く。そして、もう一つ非常に大事な要素が耐久性である。何万枚も定着しても、上で述べたようなトラブルがでないような耐久性が求められる。しかもいろいろな環境、つまり高温多湿、低温環境、そしていろんな紙で。
もう少し詳しく述べると、材質のいいローラであってもなかなか性能や耐久性を満たすことが難しいことがある。その場合、ローラにオイルを塗布することによって、性能や耐久性を向上することができる。オイル塗布装置をローラにつけるわけである。オイル塗布装置はオイルを適量、長期間に渡って同じような量を均一に塗布することが期待される。私は入社して最初の仕事はこのオイル塗布装置の改良の仕事だった。もちろんチームに入ってやるので、数人でいろいろアイデアを出して、いい方法を見つける。かなり奇抜なアイデアであっても実験してみて検討する。